デジタル化問題点のまとめ
整理して問題点をまとめてみました。
※まずは基本的なこととして
1、映画上映におけるデジタル化は、全世界的に止められない事実として進行中である。
撮影や編集など映画の“川上”におけるデジタル化は以前より進行している。
デジタル/フィルムの二項対立ではなく、いかにデジタル化していくかという過渡期において淘汰が最小限となるようにできないだろうかという問題。
(別途に、フィルムをいかに残していくかということについても考えられることが望ましい)
2、日本におけるデジタル化の状況について
現時点で、日本においてすでにデジタル化したスクリーン数は約800(日本の全スクリーン数3412=シネコン2774スクリーン+一般館638スクリーン)。2011年末には1200スクリーンがデジタル化する予定で、シネコンを中心に急速にデジタル化が進んでおり、大手のシネコンは2013年6月のメドでデジタル化を完了する予定。
■全般的な映画館のデジタル化について
◆DCP(デジタル・シネマ・パッケージ)の上映素材として、ハリウッド主導でDCI規格が定められる(2006年)
(※デジタルシネマと言う場合にDCPをさし、すでに日本の映画館で行なわれているブルーレイ、DVDなどによる上映とは別途のものである)
◆DCI準拠のDCP上映設備(プロジェクター+DCPサーバー)が高価なため、機材購入による導入が進まなかったので、配給会社と映画館が費用を分割負担するリース契約のようなシステムとして「VPFスキーム」が設けられた。
2005〜2006年頃からハリウッドで始められ、日本では2009年より「VPFスキーム」が利用されている。
※参考「日本におけるVPFの仕組みについて」文化通信 8/3付
http://www.bunkatsushin.com/varieties/article.aspx?id=1209
■非シネコンの一般館(ミニシアター、独立系映画館)におけるデジタル化について
◆VPFスキームはミニシアターや独立系映画館に条件的に無理がある ←イマココ
・具体的には、20万円以上売上があがらない作品の上映は採算が取れず、成立しなくなる(現状の上映作品の約半数がそれにあたる)
・独立系配給会社にとっては、DCP化による経費増となる場合もあり、またVPFスキームは封切初日から段階的に費用が低くなる計算のため、各地の映画館の公開時期は必ずしも全国一斉とならず今までより遅いペースでの公開となることもあると予測される
・VPFはプロジェクターを利用することでも徴収されるので、ブルーレイなどによる上映の場合はVPF費用の加算で割高になり、成立が難しくなる
→インディペンデント映画の劇場上映が難しくなる
・また、VPFスキームはビジネス上の契約システムなので、映画館の経済規模などによっては、そもそもVPFスキームを利用できない場合もある
例えば、地方の人口10万人以下都市の映画館など
→VPFスキーム以外でデジタル化する方策がないと、デジタル化できない映画館がでてくる
・VPFスキームの前提となるDCP上映設備であるが、機材が大きすぎて、スペース的に設置できない場合もある。また客席数60席以下程度やスクリーン横幅8m未満の小規模レベルではオーバースペックということもある。
◆適したデジタル化の方策とは? 規格、ハード面、経済面
◆解決策としての代替案、適した上映システムとスキームとは?
独立系配給会社の共同によるVPFサービサー業者に対しての条件交渉など
映画館による代替的システムの共同導入など
一例として「既存のDLPプロジェクター+DCPサーバー」など
ヨーロッパで行われている公的機関による助成の事例など
■ミニシアターのあり方について
◆2000年代からのミニシアターの衰退について
◆今後のミニシアターのあり方についてのビジョンとは
■デジタルシネマ革命としての自主製作・自主上映の活性化
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■フィルムについて
◆一般興行としてフィルム映写を継続する可能性について
・日本のVPFサービサー3社のうち2社は、35㎜映写機の撤去を契約事項に含んでいる、と言われている。
(デジタルシネマ倶楽部は、35㎜映写機の撤去を契約事項に含んでいないということが確認されている)
・映写設備の維持
映写機がすでに生産中止、補充部品や消耗品(ランプ)の確保が必要
・映写技師の確保について
・上映プリントの確保について
新作のプリント供給は、2013年6月以降は皆無もしくは僅少と予測される
旧作については上映プリント供給源の確保が必要とされる
―海外作品は数年で上映版権契約が切れれば上映できなくなる
―邦画は配給会社が上映プリントを保管しフィルム貸出を続けるかによる
◆フィルムのアーカイブについて
・旧作の保存 フィルムの保存およびデジタル化について
・新作について、DCPはデータ・フォーマットなので、長期的な保存については、デジタル作品もバックアップとしてフィルムで物質的に保存することも併用したほうが望ましいということもある
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