先日放送された クローズアップ現代  「フィルム映画の灯を守りたい 〜デジタル化のあらしの中で〜」 2012年5月30日(水)NHK総合にて放送

昨年の秋ごろから 盛んに議論されている
映画館のデジタル化の“ひとつ”の 側面を取り上げたレポートでした。

基本的には 映画館での上映素材がフィルムからデジタル(DCP)に 完全移行していく中で
フィルム上映ができなくなっていく 危機感について多く時間が割かれていました。

デジタル化に 対応できない劇場の多くは 大きな劇場とは一線を画して
独自な視点で過去の秀作や 世界各地で作られた秀作を 見つけ出して上映する
町の拠点として機能してきました。

こうした拠点が姿を消してゆくと
多様で豊かな映画文化を 楽しむ機会が減るのではないか?

また
フィルムでの上映の機会が減っていくと 経験値が必要な古いフィルムを扱う機会が減り
しいては 、古いフィルムを扱える人材が 減っていってしまうのではないか?

そうした懸念があることを
伊勢進富座の水野さんや 元日本電子光学工業の加藤さんへの
インタビューを交え伝えていました。

実際
シネコンをはじめ多くの映画館で コストの面から デジタル化への移行を推進し
更に、ダブルスタンダード(デジタルとフィルムの混在)にならないよう
デジタル(DCP)での上映へ 急速にシフトさせています。

このことは
新作、という意味では 製作配給サイド(提供側)で素材の準備ができ
全ての映画館にデジタル(DCP)上映できる施設が 整えば(つまり一斉に対応できれば)
比較的メリットの多い話となります。

一方で
旧作は戦前よりつい2、3年前まで ずっと
35?で上映素材が製作され、流通、保存されており その膨大なアーカイブ
全てがDVD化も含めて デジタル化される可能性も少なく
映画館からフィルム映写機がなくなってしまうと
今後人の目に触れる可能性が 全くなくなってしまう作品が
数多く生まれてしまうことを意味します。

そうした事実を踏まえて
伊勢進富座の水野さんや元日本電子工学工業の加藤さんは
フィルム上映にこだわっているのだと思います。

つまり
映画や映画館がデジタル化することによって埋もれてしまう、消えてしまう、
映画作品を守りたいのだと思うのです。

元日本電子光学工業の加藤さんは 言っています。

「フィルム映画は文化遺産であり 1台でも多くの
フィルム映写機を残すことでその文化を守りたい」

また伊勢進富座の水野さんも言っています

「フィルムに対するノスタルジックなことではなくて、
フィルムで100年の映画館が培ってきたものを、
どうデジタルの時代に引き継いでいくか。
僕らは変わる時の証人として、悩まなきゃいけないと思うのです。
この時代に劇場を預かっているから。だから、その苦しみだと思っています。」

フィルムだからいい。デジタルだからいい。

ということではなく、
財産である過去の映画作品達がきちんと見てもらえる
そういった環境を作ることが映画館の使命なのだと思います。


番組の最後にアナウンサーが
「(こうした現状を)映画館単独の努力だけで 乗り越えられますか?」
という問いかけをゲストの映画監督瀬々敬久さんにしました。

それに対して瀬々監督は
「そこは非常に難しく、
サポートと言ってしまうとおかしいのだけれど
 つながり・・・
 これまで僕たちの映画を応援してくれた映画館を
 これからは僕たちが応援していかなくてはならない。
 観客も映画館を応援していかなくてはならない。
 そういう支えあう関係を作り上げることが大事です。」
と締めくくっていました。

少し悲観的にも感じてしまいますが、映画をみんなで楽しむことをすれば

必ず活路は見いだせると思います。
思っています。
                               (酒井)

● NHKクローズアップ現代 http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3206_all.html

● 進富座 http://www.h5.dion.ne.jp/~shintomi/