デジタル・シネマ化が進行中、映画の多様性は保たれるのか?

◆ 映画上映の場でも、デジタル化が加速

いよいよ映画上映にもデジタル化の波が押し寄せてきました。アメリカのハリウッド7大スタジオが定めたデジタルシネマ規格:DCI(Digital Cinema Initiative)に準拠し、2013年にはハリウッドの大手映画会社は35mmフィルムでの映画配給を完全に止めることが発表されました。また世界の映画興行会社は設備のデジタル化をここ数年で一気に加速させています。日本でも大手シネコンにはじまり、現在順次DCI準拠のプロジェクターとデータサーバーを、2013年6月末を目処に導入を進めています。


◆ 小規模な映画が上映される機会がなくなる!?

これにより、デジタルならではのコンテンツの多様化、クオリティの均一化や同時上映などのメリットがある半面、ミニシアターなどで今まで上映されてきた作品が上映されなくなる危険性をはらんでいます。

劇場とのシステム契約形態、システム導入コスト、また配給側には作品毎にシステム利用料(VPF)が新たに発生するなど、いくつもの要素がからんでいるのですが、現状のシステムのみでは多様な映画の配給、上映の場が成立しにくくなることは事実です。


◆ DCIは、日本の劇場、配給には大きすぎる

デジタルシステムの劇場への導入を一気に加速させたVPF (Vertual Print
Fee)。DCI準拠のプロジェクターを使用して映画を上映する際に、配給側に発生する料金のことです。DCIでなくBlu-RayやDVD上映であっても、プロジェクターを使用すると発生します。これは劇場へDCI準拠のサーバーとプロジェクターを導入するコスト約1,000万円を、デジタル化によりメリットのある配給会社が一部支援しよう、というものです。このシステムとDCIが、ハリウッド大手の、大型劇場での上映・配給スケールで考案されたものであり、日本の劇場にはそぐわないことが一番の理由だと現状理解しています。特に、ミニシアターの状況とは大きく離れています。


◆ 映画、革新のとき

映画におけるデジタル化は、サイレントがトーキーになったように、大きな技術変革の時を迎えています。万が一間違った方向へ舵が切られると、映画、ひいては映像メディア全体の先細りになりかねません。現状の理解、新たなシステムの提案、世界の映画業界のケーススタディなど、やらなければいけないことが沢山あります。

そして、配給会社と映画館だけが当事者という問題ではなく、映画を作る人・見る人、映画を愛する方それぞれに関わってくることでもあります。

時代の荒波の中でも、映画の多様性を大事にしたい、また35?フィルムなど失いたくないものを残すにはどうしたらよいか、みんなで考えていきませんか。

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